恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~




少々、からかい過ぎたかもしれない。



折角、恥ずかしそうにしながらも膝に収まってくれていた狭山が、遂に怒って離れてしまった。



ま、それはそれで、いいや。
照れて真っ赤になった彼女の顔が、離れた方がよく見えるし。



頬杖をついて眺めていたら、彼女が言った。



「ね。いつから好きだって思ってたの?前に聞いた時は、もっと曖昧だったじゃない」


「さぁ…いいだろ、今更」



散々考えたって、答は出ねぇ。


最初に順序をひっくり返しちまった辺から、気持ちにも自分にも自信が持てなくなっただけで。
本当は最初から、そうだったかもしれないなんて。


言っても、信じなさそうだし。今更。


「今は間違いなく、好きなんだし」


そう付け足したら、彼女はまたワントーン赤く染まった。


別に、返事はもういらん。
期待はしてない。





『なんかもう、もやもやしたものとか、そういうのに振り回されたくないの。

子供に専念したいしそうじゃなきゃダメでしょ、だから言わなかったの!』





顔を真っ赤にして、精一杯って表情でそう言ったその姿が。




……それって、好きって言ってるようなもんじゃねぇ?




俺には、狭山のギリギリの告白に見えたから。





『恋愛放棄 第一部』 end.


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