恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「父親は最初っから居ないし、母親は事故で子供ん時に死んだから、そっから婆ちゃんとこ」

「そっか」



結局相槌しか打てない私を見てか、笹倉がぶふ、と吹き出した。



「何よ」

「いや、面白い顔してるから」



…だって考えても言葉が出ないんだもん。
可哀想とかも、絶対違うし。


結果、相槌オンリー。
経験値低い私。



「あ、だからか」



合点がいって、ぽんと手を打った。
思い出したのは、タッパーに詰まってた柿の種のことで。



「笹倉ってお婆ちゃん子だったんだ。お父さんが、今時の若い子には珍しく、古い習慣知ってるなって褒めてたよ」

「何が」

「タッパーの中。洗って返す以外に、あんな風にするんだね」



そう言えば、今度は彼が微妙な顔をする。



「あれって常識じゃねぇの?」

「…ちょっと、私を常識知らずみたいに見ないでよ」



世間知らずを自覚したところに、常識知らずも上乗せされた気分だ。
拗ねて知らず知らずに膨らんでた頬。


彼が上半身ごと此方に向いて、向かい合う。
両手で私の頬を挟んで、空気を頬から追い出した。



「じゃあ今度、お墓参り一緒に行ってくれる?」

「うん」


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