恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「あれ。言ってなかったっけ」

「何が?」

「俺、両親もう居ないんだわ。育ててくれた婆ちゃんも、大学ん時に死んじゃったし」



さらりとそう告げる彼に、私は言葉を飲み込んだ。


もう昔のことのようだし、そのサラリ感を真面に受け取っていいのか。
辛さとか寂しさとか、私が推し量って言葉にしてはいけない気がして、そうしたら何を言えばいいかわからない。


こういう場面で言葉が出ない、私はつくづく、世間知らずだ。



「ってか、こないだ病院に言った時、お義母さんに聞かれて話したんだけど…あ、お前はジュース買いに行ってた…か」



そういや、そうだった。
と、一人納得してカップにまた口をつける彼。



「…そうなんだ、知らなかった」



ようやっと、それだけ言った。


っていうか。
知ってたなら、言ってよお母さん…!


と、抗議したくなったが、よく考えれば母からすれば私は当然知ってるだろう事柄なのだろう。


頻りに、早く一緒に住むことを勧めた理由が、なんとなく解った気がする。



「あれ、じゃあ、他に挨拶する親戚とかも、居ないの?」

「…んー…居ない」



少し考えるような素振りはしたけれど、答えはあっさり、居ない、と出た。

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