恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
大通りにある店の前は少し賑やかで、ぽつぽつ落ちる私の言葉が届くのは、電話の相手くらいだろう。


話していると、店の扉が開いて此方に向かう人影がある。
恵美だった。


恵美は、私の隣に一人分くらいのスペースをあけて同じようにガードレールに腰を置くと、手にしたポーチから煙草を取り出した。

母との会話を半分相槌のみで流しながら、恵美を見て珍しいなと思っていた。
恥ずかしいのか、喫煙室か自分の部屋で吸うところしか見たことがない。


共通のスペースやまして、路上で吸うのを見るのは初めてだった。
手にしっかり携帯灰皿を持っているのはさすがだけれど。



「ん、次の休みに帰るから。もう少し待っててね。じゃあ切るよ?」



彼女を見ながら電話を切る。


煙草が余り似合わない甘めの顔立ちと装いだけど、その不協和音のような雰囲気がまた人を惹きつける、綺麗な横顔だった。



「珍しいね、煙草」

「無性に吸いたくなっちゃって。お母さん、大丈夫?」



もしかしたら、それを心配してきてくれたのか。
そう思うと少し、じんわりと、心が温もる。
だけど。



「大丈夫。今度の休みに会いに行くって言ったら、ちょっと落ち着いたし」

「そうなの?店の中でも随分長いこと鳴ってたから」



隣に座っていた彼女には、バッグの中でも携帯のバイブ音がわかってたんだろう。



「平気だって。いつものことだしね。カナちゃんは?ちょっとは話題逸れた?」



店に戻ろうかと思ったが、彼女の煙草が終わるまで待つことにした。
だけど、母の話はしたくない。


母の着信が異常なのは、わかっている。
だけど、変に気を回されたくないし、何より母を悪く言われたくなかった。


誰かに聞かれると、何にたいしてかわからない、罪悪感のような不安感のようなものが胸に生まれるから。


「女の子ってなんで恋バナとか好きなんだろうね。気づいたらすぐソッチに話いくんだもん」


だから、話を逸した。
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