恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
小さく水音を立てて離れた唇は、濡れていて私の口紅の色がうつっている。


悔しいけど膝に力が入らないから、手を離すのが怖くてしがみついたまま、睨みつけた。


薄暗がりで良かった。
きっと顔、真っ赤だと思うから。


彼はきっと、馬鹿にしてるんだろうなと思ったけれど、思いのほか柔らかい笑みで見下ろしている。


胸が、疼く。


ずっと首筋を撫でていた手が頬に辿りついて、指先と甲でするりと撫でていく。その心地よさに心酔しそうになって。


くっと喉を鳴らす声が聞こえた。
初めて会った時のような、笑い声。



「良かった?ほっぺ熱い」



はっとして、彼を見上げると、やっぱりそこには、打って変わって小馬鹿にしたような微笑が浮かんでいた。



「そうやって馬鹿にするからイラつくんです!」



キィ!と思わず本音が出たが、もう取り繕うのも腹立たしいので構わないことにした。
ぐっと両腕を突っ張ると、今度はすんなりと距離が取れる。


何か胸にあるモヤモヤとか熱とか。
そんなものを吐き出したくて、大きく深呼吸した。



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