恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
少し静かになって、何度かしゃくり上げてはまたわぁんって泣き声を上げて。
何度か繰り返すと、泣きすぎて頭がぼんやりしてきた。



「藤井さん、程々にしてくださいよー」



奥から、誰かの声がして、顔を上げた。
扉と反対、ワインセラーがあると言っていた方だ。



「奥、厨房と繋がってんの」


一緒にしゃがみこんでいてくれた藤井さんがそう言ったけど


「…ひっく」


放心して、恥ずかしいとか思う余裕もなかった。



「落ち着いたな?送るから、荷物とってくるまでもう少しここで待ってろ」
立ち上がる気配がした。

「…自分で帰るからいい」



緩く頭を振る。



「その顔で?電車かバスか歩きか知らんが勇気あんな」



えげつないぞ、って言われて無言になった。


少しして、私のバッグも一緒に戻ってきてくれた藤井さんに連れられて、俯きながら店を出る。


駐車場まで、少し歩くけど。

そう言ってずっと手を引いて歩いてくれた。



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