恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「いっ…て!」



藤井さんは直撃を受けた鼻の頭をさすりながら、何か言おうとして、目を見張った。


ぼたぼたぼたって、頬が濡れていくのが自分でもわかって、手のひらで拭う。



「軽蔑された!やっと仲直りしたトコなのに!」


目の前で、大男が慌ててるのがわかる。
けど知らない。


「ばかぁ!」


ぎゅっと目を閉じたら、また涙が溢れてきて。


「ちょ、ちょっと待て!」


もう一度殴ろうとした私の手を掴んで、人目を憚って貯蔵庫へ逆戻り。


連れ戻された拍子に、片手から化粧ポーチが滑り落ち、ガシャンと何かが壊れた音がした。



「う……」



それを足元に見つめながら、壊れた何かが無性に哀しくて。



「とりあえず、落ち着け」


ぐぃっとスーツの袖で拭われるのが、痛い。


「痛い!藤井さんのせいじゃんか!」


うわぁぁって大声が今になって出た。


これは八つ当たりだ。
素から信用されるような行動してないからだ。



でも、八つ当たりを受けてもらうくらいの
責任は負ってもらってもいいと思う。


しゃがみこんで、ポーチを膝に抱いて泣いた。


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