君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
その言葉に、下げていた頭を上げると、そこには怒った東野さんはいなかった。


「言っておくけど、あんな契約の1つや2つ、俺にかかれば簡単に取れるさ。それに…あの時、櫻田がキレていなかったら、俺がキレてたしな」


「東野さん…」


「嫌いだったんだよ、三田社長。見ててスッキリした。…フッ!それに俺に殴られるより女の櫻田にあんなこと言われた方が屈辱的だろ」


うっ…!
なっ、なんだか東野さんの影に黒いオーラが見えるのは私だけ?


でも…私、どうにか東野さんの秘書をクビにはならない…のかな?


「櫻田」


「はっ、はい!」


東野さんに名前を呼ばれると、いつもこう、ピシッとしてしまう。


「お前、根性も度胸もあんじゃん。…見直した」


「………」


「さて、帰るか」


すたすたと何事もなかったかのように歩き出した東野さん。私はさっきの東野さんの話を、何度も何度も頭の中でリピートさせながら、その場から動けずにいた。

『見直した』


とっ東野さんが私のことを見直したって言った!?

こっ、これって夢じゃないのよね?


目が覚めたら夢でしたってオチじゃないわよね?

信じがたい現実に、自分で自分の頬をつねってみるが、やっぱり痛くて。
どうやら現実のようだ。
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