2LDKの元!?カレ
ヘトヘトになりながら自宅マンションにたどり着くと、ローヒールのパンプスを脱ぎ捨てる。
途中廊下にあるバスルームに立ち寄って、湯張りのスイッチを押してからリビングへ向かった。
大きなため息をつきながら、ソファーに身を沈めると、テーブルの上の小さな箱に目が留まる。
そこに置いてあるのは、コンビニで売っている薄いプラスチックの容器に入ったショートケーキだ。
“Happy Birthday Shihoko”
容器に貼られたメモをみて、ハッと気が付く。
「そうだ。私、誕生日だったんだ」
思わず苦笑いする。自分の誕生日を忘れていたなんてこんなことがあるのだろうか。
「……忙しかったもん、仕方ないか」
三十歳。
乙女の節目の誕生日は、あっけなく訪れ、去ってしまった。
「三十路か。なんだかじたばたする余裕もなかった」
ふうと一息ついて、テーブルの上のケーキに視線を移すと艶やかなイチゴに誘惑される。
「ちょっと遅い時間だけど、せっかくのケーキだし、食べちゃおう」
私は食器棚からマグカップを取り出すと、インスタントコーヒーを入れるために、電気ポッドでお湯を沸かした。