2LDKの元!?カレ

「閃いた」

みちるはそう言って大判の手帳を開くと、スワロフスキーが散りばめられた万年筆をさらさらと走らせて満足そうに頷く。

「よし。週明けの会議、年の差恋愛ネタでいこう」
「いまからで間に合うの?」
「間に合わせるの!」

こういう時のみちるは、神がかっているとさえ思う。普通なら半月ほどを要する作業を、数日で終わらせてしまうから怖い。

「え、やだあ」
「何がいやなのよ」
「だって、みちるの企画に私の企画が霞んだら嫌だからよ」

私が思い切り顔をしかめると、みちるはしわの寄った私の眉間を人差し指でギュッと押した。

「志保子、そんな顔しないの」
「したくもなるよ、ただでさえ問題山積なのにさ」

思わずため息を漏らすと、みちるは事も無げに言う。

「意外と西野がどうにかしてくれるんじゃない?」
「どうにかって、そう簡単にいわないでよ」

実際問題として、あと五日で解決できるレベルではないのだ。
鏑木圭に取材交渉すらできていない現状をどうにかしなければならないのに、未だ打破する糸口を見つけられないでいるのだから。

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