オクターブ ~縮まるキョリ~
「ちょっと、これ見てみなよ」
香織は意味深な笑いを浮かべたまま、指差した箇所をトントンと叩いてみせた。
「え?なに?」
目線を香織の指先に向けると、そこには私の心臓を跳ねさせるキーワードが書かれていた。
『二年C組 春瀬一輝』
そこに書かれた文字を見た瞬間、思わずハッと息を飲んだ。
そんな私を見て、香織は今度は嬉しそうに笑った。
「詩帆、これ読んでみて?」
「…にねんしーぐみ……はるせ、かずき」
「ということは?」
ということは。
否、「ということは」も何も、そのままの意味だ。
春瀬一輝は二年C組。
そして私も二年C組。
同じクラスだ。
そう、同じクラスになったのだ。
…あの、春瀬一輝と!