私、ヴァンパイアの玩具になりました
「ぶっ……、ゴホッ…ゴホッ……」

私は、口に含んだお粥をすべて吐き出してしまう。

…し、失礼だけど…。とてつもなく…。ま、マズい…です。

「…大丈夫?優?」

裕君は、咳だと思ったのか、私の背中を優しく撫でた。

「ゴホッ……、だ、大丈夫…です…」

変な酸味や、甘味…。……なんだろ?この味。何ともいえない……。不思議。摩訶不思議。

「食べれなかったら、食べなくて良いからね?」

「い、いや!絶対に食べます!完食します!」

せっかく……。私なんかの為に裕君がお粥を作ってくれたんだもん……。食べないと、それこそ失礼だよ……。

「本当?!」

裕君は、嬉しそうに声をあげる。私は、出来るだけの笑顔を見せてから、少し震える手でお粥を口に含んでいく。

「…………ぅ……」

ダメ…、ちゃんと食べないと……。

「…………………」

裕君のキラキラな目を、私ごときが濁らせたらダメだ……。

私は、無言でパクパク食べ続ける。この間ずっと、裕君は私が食べている所を見ていた。


「ご、ごちそうさまでした。…凄い…お、美味しかったです。…裕君、ありがとうございます」

食べ終わって空になったお皿を、裕君に渡す。

私は、自分との戦いに勝ち続けて。裕君が作ってくれたお粥を見事にご飯粒一粒も残さずに完食した。

「………えへへっ…」

裕君は、ニコニコと嬉しそうに、空になったお皿をお盆に乗せた。

「……………ふぅ」

今日、一番頑張った…ような感じがする…。

「本当に、食べてくれたね。僕、凄い嬉しい!…優が初めてだよ!僕が作った料理を全部食べてくれたの!」

「へ?!そうだったんですか?!」

「うん。家族みんな食べてくれないんだ。…僕、嫌われ者だから」

「そんなこと無いですよ」

私は、変な空気を飛ばすために笑顔で否定した。だけど、そんな事で変な空気が無くなることは無くて。


「昨日も言ったけど。そんなこと、あるんだよ」

「……………………」

「でもさ、優に好きになってもらえば、僕はそれだけで良いんだ…」

私の喉元を、触りながら裕君は呟くように淡々と言っていく。

「でも………」

「ねぇ。優、…僕だけの物になって」

喉元から、髪の毛へ指が動き。私の長い髪の毛に、裕君はキスを落とした。

「ぇ、ぁ…ぁの………」

「優が欲しい。わがままって言われても。優ダケが……、欲しい………」

裕君に、目を見つめられて、私の体はまた動かなくなった。

でも、すぐに裕君は視線を外し。私から離れると、ドアに向かって歩き始めた。
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