私、ヴァンパイアの玩具になりました

さすが、バカって予測不可能な事をしますよね

リビングへ向かうと、皆さんは既に待っていて。

「お、遅れてごめんなさい……」

私は、頭を下げて謝る。翔君は、謝らず自分の席へ座った。

「大丈夫だよ、優さん。私達は、今来たばかりだからね」

おじさんは、そう言ってニコッと笑った。

でも、そんな感じには見えないくらいに、皆さんのコップにはあまり飲み物がはいっていなかった。

……結構、…待たせた感じ…ですよね…。

「父さん、そんな嘘は良いよ。僕は、一時間も待ってたからね」

本当に待ちくたびれたよ、と日向さんがプクーっと頬を膨らませた。

「お前、そんなに待ってないだろ」

おじさんが、日向さんの言葉を否定する。私は、苦笑いを零してから、頭を下げて席に座った。

「僕は、十分が一時間位に感じるんだよ」

日向さんは、少し不機嫌な雰囲気で残り一口の飲み物を飲んだ。

「ごめんなさい……」

「優さん。日向の言葉なんか気にしなくていい。それに、日向。…少しは優しくなったらどうだ」

おじさんは、私に優しく微笑んでから、日向さんにキツい口調で怒った。

「これ以上、僕が優しくなったら僕が壊れちゃうよ」

「…お前が優しいなら、薫瑠はどうなんだ…」

おじさんは、溜息混じりで薫瑠さんに視線を移す。

「薫瑠は、ただの偽善者だよー」

「…………………」

ニコニコと日向さんは、薫瑠さんに微笑んだ。薫瑠さんは、笑顔のまま何も言わない。

……日向さん…、凄い酷い事をサラリと言い過ぎでは?

なんて、口が裂けても顎が外れても言えませんが…。

「…まだ薫瑠の方が良い。お前みたいな奴よりはな」

おじさんは、呆れたように呟くと執事さんとメイドさん達を呼んだ。

「父さんって、僕に対してだけツンデレだよねー?そんなに僕が愛おしいなら、もっとデレデレしていいのにー!」

日向さんは、屈託のない純粋に見えて、どこか純粋さに欠けている笑顔でおじさんに言った。

「…日向。今度、一緒に病院へ行こうじゃないか」

おじさんは、ニコッと優しい笑顔で日向さんに話しかける。

執事さんとメイドさん達は、料理を置き終わるとリビングから静かに出て行った。

「えー?…それは無理かなー。だって、明日からはもう学校始まるしさー」

「「………………え?!」」

日向さんの言葉に、私と愛希君、翔君、裕君が同時に声を揃えて叫ぶ。

え?え?!…も、もう明日ですか?!

だ、だって…制服のサイズ測ったの今日ですよ?!

明日に出来るなんて、そんな無理な話…。

「え?君達、知らないの?明日から急遽、学校が始まることになったんだよ?」

日向さんは、目を見開くと、そのまま説明してくれた。

「そ、そんなの聞いてないよ!」

「僕も」

「僕も!!」

「わ、私もです」

翔君、愛希君、裕君、私は、知らない事に少し焦る。

「…………おい、嶺美」

おじさんが、とても低い声で嶺美さんの名前を呼んだ。嶺美さんは、いたって普通の表情。

「……言ったよな?…明日から学校が始まる事になったと、愛希、翔、裕、優さんに伝えておけとな?」

「………用事があった」

嶺美さんは、ツーンとそっぽを向いた。

「嶺美に頼んだ父さんが悪いだろ」

藍さんは、そう言うと、いただきます、と言ってご飯を食べ始める。

「はぁ………。…いただきます…」

おじさんは、溜息を吐くと、手を合わせてからご飯に手をつけた。

おじさんが、食べ始めると、皆さんが手を合わせてご飯を食べていく。

「…いただきます」

私は、一番最後に手を合わせると、喉を潤してからご飯を口に運んだ。
< 65 / 122 >

この作品をシェア

pagetop