私、ヴァンパイアの玩具になりました
食事を始めてから、十分くらい経った頃。

おじさんは、飲み物を飲んでから、私に視線を向けた。

「…という事で、優さん、嶺美が連絡しなくてすまんね。入学式は明日からだから、今日は早く寝るといい」

おじさんが、ニコッと微笑むと、薫瑠さんは何故か嬉しそうに口元を緩めた。

「ん?薫瑠、どうした?…なにか嬉しいことでもあったのか?」

嬉しそうな薫瑠さんに、おじさんが気づくと、薫瑠さんに話しかけた。

「いえ。…今年で学園生活は最後なので。…楽しもうと、考えていたダケです」

「そうか、そうか。…日向も、薫瑠みたいに純粋だと私も嬉しいが…」

おじさんは、そう言って、日向さんに視線を向けた。

「僕は、薫瑠より純粋だよ!」

日向さんは、ブーブーと頬を膨らませる。

…怒りかたが、子供っぽいです……。

「どう考えたら、そんな事が言えるのか不思議だな」

「え?普通に考えたよー?」

日向さんが、真顔で言い返すと、翔君以外の皆さんが顔を引きつらせる。

「…お前の普通は、異常だってことが分かったな」

おじさんが冷たく言うと、日向さんはニコニコと微笑んだ。

「僕の異常は、普通ってこと?」

「まぁ、そうだな」

日向さんの疑問に、おじさんが答えた。

「えー?そんな事ないと思うけどなー。ねぇ、BC優さん?」

「ぅへっ?!…え、えぇと…」

急に日向さんに話をふられ、私は変な叫び声をあげてしまった。

「優さん、日向の言葉は無視してご飯を食べなさい。…優さんの貴重な時間を、こんな奴で潰す必要ないからね」

ニコッとおじさんが、私に優しく微笑んだ。私は、苦笑いを浮かべると、日向さんをチラッと見た。

「………で?質問に答えないのですか?」

日向さんが、私に優しく問いかける。

私が、答えようか迷っていると、愛希君が椅子から立ち上がって、お皿を手に持った。

「……僕、ちょっと一人でご飯食べてくる…」

そう言い残し、愛希君はリビングから出て行った。

パタンと、静かに閉まった扉を見て、おじさんが心配そうに首を傾げた。

「……愛希、具合でも悪いのか?」

「…僕には、そんな風見えなかったけどね」

「裕には、どういう風に見えたんだ?」

おじさんが裕君に聞くと、裕君はニヤッと笑う。

「…愛希、血が欲しくなったんだよ。……今頃、血が欲しくて部屋で、もがいてるんじゃない?」

「…………………」

裕君の言葉に、私の手が止まる。裕君は、おじさんから私に視線を向けた。

「優、僕はまだ我慢出来るから良いけどさ。…愛希、理性とかないし我慢出来ないから。…愛希、多分、優の事を思って部屋に戻ったから良いかもしれないけどさ…」

「裕、ヤメなさい」

薫瑠さんが、裕君の言葉を遮るように言葉を発した。

「………ここにいる本来の目的を、もっと考えた方がいいよ」

でも、薫瑠さんの言葉を無視して裕君は口角をあげた。

「…………は…」

「…そうそう、僕はもうご飯を残すよ。僕の残りは父さんが食べてよ!」

私が返事をしようと、震える口を開こうとすると、日向さんがワザとらしく、声をあげて席を立つ。

「なにを言ってるんだ日向!」

おじさんの怒りを気にもせずに、日向さんは私の所まで来て、耳打ちをする。

「……ほら、立って……」

「………日向さん?……はい………」

耳元に、いつもより低くて優しい声をかけられ、私は思わず返事をして席を立った。

「…日向、優さんを連れてどこ行くんだ」

私の手首を優しく掴み、リビングを出て行こうとした私逹におじさんが声をかける。

「ちょっと、昼くらいに約束してたんだよ。…ね?BC優さん?」

「…あ、はい……。そうです…」

「………日向、くれぐれも手は出すんじゃないぞ」

「それじゃ、BC優さんがここにいる理由がなくなるよー」

「日向!」

「冗談、冗談。そんなにガミガミ怒ってると、ハゲるよ?父さん」

日向さんは、本気で怒っているおじさんに、火に油を注ぐような発言をする。

「怒らせてるのは、おま…」

「じゃあ、BC優さん、父さんがハゲる前に出て行きましょうね」

おじさんが怒っている途中で、日向さんは私の手首を引っ張る。

そのまま、私と日向さんはリビングから出て、階段を上がり、日向さんの部屋らしき所へ入っていった。
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