私、ヴァンパイアの玩具になりました
「はい。…僕はBC優さんの事が大嫌いで仕方ない位です」


日向さんは、そう言って長い髪の毛を纏めていた白い紐を解く。

日向さんの紫色の髪の毛が魅力的で、私は少しの間、無言でみていた。


バチッと目が合うと、私は慌てて逸らし、部屋の扉へ近寄ろうとしながら、喋る。

「……あの、でしたら私はいない方が…?」

「…僕の話聞いてました?アナタといたいから、と言いましたよね?アナタは、一緒にいたいと言った僕の言うことが聞けないんですか?」

「……いえ、そういう訳ではないです」

私は、首を横にゆっくりと振る。

私が思ったのは、私の事が大嫌いなのに、なんで一緒にいたいと思うのかが…不思議なだけで…。


「……日向さんは私が大嫌いですか?」

「何度も言わせないで下さい。……大嫌いです」

「…そうですか…」

でも、翔君は言ってた。

『日向兄ちゃんの大嫌いは、大好きの反対だから、気にしなくて大丈夫だよ』

って。

でも、まぁ翔君が落ち込んだ私をみて、優しい嘘を言ってくれたんだと思うけど。

…私が日向さんに出来ることは、一つしか思いつかない。

「……いきなり、なんですか」

「いや……、その……」

一人でゴチャゴチャ考えていると、日向さんが不機嫌そうに私へ問いかけてきた。

急に、聞かれた私は言葉をなくす。

「…言えないような事なんですか?」

「そんな事はないです…。ちょっと…、考えていて」

「なんてです?」

「───……日向さんに迷惑をかけない程度で、少しでも日向さんの気持ちが大嫌いの上へいかないように頑張ろうかと…」

私は、日向さんに視線を向けると真剣に答えた。


私には、これしか思いつかなくて……。

…でも……、バカな私にしては、結構ちゃんと考えたと思います。

「もう無理じゃないですか?…アナタの事は、取り返しがつかない位に大嫌いなので」

「…………ふふっ、そうですね」

日向さんの言葉に、私は思わず笑ってしまう。

もう仕方ないのかもしれない。

だって、日向さんは私に、会ったときから大嫌い、とかなんとか。

ご丁寧に、私の前で教えてくれましたし。

「………こんな事言った後、笑った人を見たのは初めてです。さすが、バカって予測不可能な事をしますよね」

「…………はい」

日向さんは、私をバカにしたように…バカにして笑う。

「…………………」

「……日向さん?」

日向さんは、私の顔をジーッと見てきて。

私は、どうしたんだろう?と思い、声をかけると、日向さんは息を吐いて、ニコッと笑った。

「僕は、アナタが大嫌いです。世界で一番。BC優さんみたいな、女は初めてなので面倒です。バカで面倒で…、………僕の頭の中を乱すアナタが憎くて仕方ありません」

「……す、…すいません」

日向さんは、長い指で私の髪の毛に触れながら、ニコニコと私に大嫌いアピールをした。


わ、私、そこまで日向さんに迷惑かけていたんですか?!

………はは…、さすが、私。

人に迷惑をかける事では、人一倍凄いんですね……。


「……もう夜遅いですね。…早く僕の部屋から出て行って下さい」

「え、……あ、はい…」

なんで私が、日向さんの部屋に無理矢理はいってきている事になっているの?

とかは、考えない。だって、………日向さんだもん。

「……しょうがないので、部屋まで送ってあげますよ」

「…え?……そ、そんな…いいですよ」

日向さんは、私の腰に手を回しながら、部屋を出る。

「…なんです?…この僕が送ってあげますよ、と言ってるんですから、素直にありがとうございます、とでもアナタは言ってればいいんです」

「…あ、ありがとうございます……」

日向さんは、口早に私に文句を言う。

私は、素直に日向さんの言葉を聞いて、日向さんにお礼を言う。

お礼を言った私に、日向さんは満足したのか、その後は何も言わずに、私の部屋まで送ってくれた。

「では、BC優さん、お休みなさい。…明日は学校が始まるので、早く寝るといいですよ」

「はい、お休みなさ……」

私が挨拶を言っている途中で、日向さんは扉を閉めた。

「…………………」

意地悪だったり…、優しかったり、冷たかったり…。

日向さんは、本当に読めないです…。


私は、扉の目の前で苦笑いを浮かべると、そのままベットへ倒れ込み、重くなりかけた瞼を閉じて、夢の世界へ飛び込んだ。
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