私、ヴァンパイアの玩具になりました
日向さんの部屋は、意外にも大人っぽい色合いの家具等でまとめてあって。

「ちょっと待ってて下さいね」

「………は、…はい」

日向さんは私に声をかけると、部屋の奥へと消えていった。

「これ、どうぞ」

日向さんは、部屋の奥から戻ってくると、私にある物がはいっている袋を私に差し出した。

私は、それを手にとって見る。

袋の中には大きくて美味しそうなメロンパンが一つ。

「………メロンパン…ですか?」

私は、メロンパンを見てから日向さんに視線を向けた。

「はい。…ご飯の途中で、BC優さんを連れてきてしまったので。……お腹が減ってると思って。…まぁ、たまたま残ってたメロンパンを仕方ないので、あげますよ」

「…ありがとうございます」

私はお礼を言うと、メロンパンを袋から出して、パクッと一口かぶりついた。

口の中には、メロンの優しい甘さが広がって。

久しぶりに食べたメロンパンは、凄い美味しかった。

「……いえ。礼には及びません。…でもまぁ、毒がはいってても僕には関係ありませんが」

「…………え?!」

ど、どどどど、毒がはいってるんですか?!このメロンパンに!!?

「冗談です」

驚いた私の反応をみて、クスクスと日向さんは肩を震わせながら笑う。

「そ、そうですか…」

私は、笑っている日向さんを気にしながらも、メロンパンをまた口に含んだ。

ビックリした…。…メロンパンを飲み込んだ後に言われたから、一瞬、死んじゃうって事を覚悟しちゃいました…。

「……あ、あの、日向さん」

「なんですか?」

「私なんかを夜に来るように言ってきたって事は、私に何か用事でもあるんですか?」

私は口元についた砂糖の粉を人差し指でとって舐めた。

「いいえ、特になにも」

「あ、そうで………、え?!用事がないのに、私に来るように言ってきたんですか?!」

サラッと日向さんは、笑顔で答えた。

「なにか問題でも?それとも、なんですか?用事もないのに呼んだら、迷惑だと?」

「い、いえ……。そういう訳ではないんですが……」

日向さんの冷たく言い放たれた言葉に、私は少し口ごもる。

だって、日向さんは私の事が嫌いって言ってたから…。

嫌いな人とは、いたくないって思うのが普通だから………。

「なにか理由でも言った方がBC優さんは納得するんですか?」

「…あ、…そんな無理矢理………」

「………僕がアナタといたいと思ったからです」

日向さんは、優しく微笑んでニコッと笑う。

「……………へ?」

日向さんの口からは、予想外以上の言葉が出てきて、思わずマヌケな声が出た。

「なにか問題でも?」

「い……、いえ……。ただ、日向さんがそう思って私に部屋へ来るように言ったとは、さすがに思わなかったので…」

日向さんから言われたことが少し意外で、…でも嬉しくて。

完全に嫌われてなくて良かった、という安心感が私の頭を一杯にする。

「……安心して下さい。…僕はBC優さんが大嫌いですよ」

「………で、ですよねー………」

日向さんは、ホワワンとした柔らかな笑顔で私に教えてくれて。

私は、日向さんが言った言葉に笑顔で…、いや苦笑いを浮かべた。

日向さんの言葉に傷ついた私の心は、治るのに当分かかりそうです。
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