Wonderful DaysⅠ
「お前の弟、本当にただの高校生かよ!? あの二人を撒くなんて……」
言葉を失うアル君は「はぁ」と溜め息を吐くと、俺を恨めしそうに睨む。
「あのねぇ、俺を睨まないでくれる? それに魁君は正真正銘、高校生。
そんな事は、確かめなくても知ってるでしょうよ?」
未だにムスッとしているアル君に言い返せば
「くそっ! 折角、マリアの好きな日本料理を予約したのに……」
心底、悔しそうに吐き出した。
「じゃあ、俺が代わりに食ってやるよ」
予約をキャンセルするのも悪いし、名案だと思って言ったのに
「何で俺が、野郎と向かい合って食事をしなきゃいけないんだよ! 仕事じゃあるまいし」
物凄い嫌な顔をして即答された。
それを「まぁ、まぁ」と宥めて時計を見れば、ちょうどアル君が予約した時間で。
「ほらほら、予約した時間だよ。こんな時間にキャンセルしたら失礼だから、早く行こう!」
嫌がるアル君を半ば強制的にエレベータに乗せて、美味しいご飯を食すべく8Fのボタンを押した。
───魁君。アル君のお守りはお兄様に任せて、マリアちゃんとのデートを楽しんでくるんだよ!
アル君の奢りで美味しい食事を堪能した俺達。
その後は、28Fにあるスカイラウンジで美しい横浜の夜景を眺めながら酒を飲んで、最後はアル君の愚痴を聞きいて夜は更けていった。