桜舞う
初めての出陣
直之が西国へ戻ってからも、和那の国は平和そのものであった。
吉辰と鈴姫は共に朝を迎え、共に日々を過ごす。鈴姫の料理も継続され、城下も市や祭りなどで活気は変わらずいた。

一つ変わったことといえば、鈴姫の長刀である。直之が西国に戻ったあと、吉辰は刀や槍の稽古に鈴姫を誘うようになった。始めは吉辰の鍛錬の様子を見守っているだけであったが、そのうち、

「鈴、少し相手をしてくれ。」

鈴姫は吉辰の鍛錬の相手を長刀でするようになった。それも極々自然にである。吉辰の実に巧みな誘導にまんまとのせられ、気づいたら鈴姫の長刀は城下でも知る所となった。

鍛錬が終わると、吉辰は必ず鈴姫に
こう言う。

「さすがわしの妻だ。」
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