桜舞う
そんな平和な和那の国に、一つの文が届いた。直之からである。

鈴姫は辰之介に呼ばれ、広間へ行った。そこにはすでに吉辰もいた。鈴姫は何事かと思い、二人の前に正座し、姿勢を正した。後ろには松江も控えていた。

沈黙を破ったのは辰之介であった。

「鈴、直之殿は今西国を統一するため最後の戦をしておってのう。場所はここから馬で3日程度の上宮の国じゃ。しかし敵はなかなかしぶとく、直之殿ですらそうやすやすとはいかんらしい。そこでだ。和那の国に援軍の依頼が来た。」

鈴姫は黙って父の話を聞いていた。
世は乱世。戦が起こるのは当たり前のことである。和那の国が余りにも平和なため、鈴姫は乱世の常を忘れていたのかもしれない。

(兄上の援軍ということは…。)

「わしは吉辰に援軍に行かせようと思う。鈴も武士の妻故、分かるな。」
「はい。覚悟はいつでもできております。」
「良くぞ申した。それでこそ、我が娘。急であるが事は急ぎ。吉辰、明後日に出陣せよ。」
「承知。」
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