小悪魔な彼
 
「うん……。ちゃんと話したいから……家に来ない?」
「え?」


家と聞いて、一歩引いた。

だって、葵ちゃんの家となれば、当然猛にぃの家だ。


「あ、今日は猛、仕事だから家にいないよ」
「あ、そっか……」


なんとなく察してか、葵ちゃんは慌てて言葉を付け足した。


「香澄ちゃん、昔から猛のこと苦手だよね」
「ちょっとね……だって猛にぃ、いつも人をいじめてばっかだから」
「好きな子はいじめたくなるんだよ」


にこっと微笑む葵ちゃん。
それを聞いて、ドキッとした。


「あ、もしかしてこれはまだNGワードだった?
 猛、小さい頃、香澄ちゃんのこと好きだったんだよ」

「……」


一昨日までの自分なら、「絶対にそれはない」と笑い飛ばしてた。

だけど昨日の真剣な猛にぃを思い出しては、もう笑えない。


「ま、昔のことだからさ!
 今は気にしないで!とりあえず、家に行こ?」
「……うん」


昔だけのこと……。

それだったら、だいぶ気が楽になれたのに……。
 
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