小悪魔な彼
峰岸くんも、あたしの隣に一緒に座る。
少しだけ開いた距離。
きっとこの距離は、彼の気遣いだ。
「………知ってたんでしょ?」
始業ベルが鳴ってしばらくし、静かになった教室で、ようやく口を開いた。
あたしは体育座りをして、俯いたまま。
「先生が結婚すること……知ってたんだね」
「……はい」
あまりにもストレートに答える峰岸くんに、つい腹が立った。
「知ってて、バカにしてたんでしょ?
もうすぐ結婚する三浦先生のことが好きなあたしを見て……
早くフラれろ、とか思ってたんでしょ?」
こんなの、ただの八つ当たりだ。
だけど、この悲しみをどこにぶつけたらいいのか分からず、つい嫌なことばかり言ってしまう。
「卒業したら、告白するとか言って……
バカだよっ……」
そんなの……ただの自分の都合。
先生が、その日まで独身でいる保証なんて、どこにもなかったんだから……。