小悪魔な彼
そう…
それをさせているのはあたし……。
あたしはそっと顔を上げた。
「俺なんて、ほかの人が好きだって言われてるのに、好きなままなんですよ。
そっちのほうが、バカにされることだと思いません?」
苦笑し、切なさを帯びた瞳。
溢れていた涙も止まってしまう。
「だけどあの時、バカだって言ったじゃん」
「あれは……香澄先輩が、あまりにも三浦先生のことしか見えてないから……俺も腹が立ってたんです」
それが、ヤキモチだったんだと、心の中で気づいた。
だけど今は、そんなことは口に出さない。
「今だって、ほかの男のせいで泣いているあなたに、どうしたらいいのか分からない」
「……」
困った顔をする峰岸くんに、あたしは顔を逸らした。