The side of Paradise ”最後に奪う者”

もう一杯注ごうとしたが綺樹が手で蓋をした。


「駄目だ。
　日本酒は回りやすい」


手を止めたままの涼の目が光る。


「それは見てみたいな」


綺樹は嫌な顔をした。


「趣味悪いぞ。
　泥酔した女を抱くのは」

「どういう風に乱れるか見てみたいだけ」


しれっとした顔でそう言いながら、自分の杯を空けている。

綺樹はしばし唖然とした。

こんなこと言う奴だったけ。

ああ、そうだ。

二回目の結婚の時代もそうだった。

なんだか図太くなったよなと思ったんだ。

綺樹は突き出しに目線を下げたまま、うっすらと笑った。