The side of Paradise ”最後に奪う者”
「おまえこそ日本酒にのまれるなよ」
涼は綺樹が自分との何かを思い出しているんだろうと察していた。
やや伏せられたまぶたと笑みの作られたくちびる。
愛する男を想っている顔だ。
涼も視線を下げた。
その顔は今の自分には結構堪える。
自分だけども、他人だ。
惚れている女が他の男にぞっこんの、のろけを見ている気になる。
綺樹の杯に注ぐ。
「飲まなくていい。
空いていると具合が悪いから」
「具合が悪い?」
「ああ、そうだな、なんて言うかな。
その空間の調和が狂っている、かな」
「難しいな」
自分の鼻先をつまむような仕草で、考え込む表情になった。