The side of Paradise ”最後に奪う者”

成介はその後は何も言わなかったから、自分も何も言わなかった。

淡々とまたいつもの毎日が始まっていた。

成介は顔を動かさず、目だけで斜め方向にある執務室を見ていた。

さやかにはもちろん報告した。


「そう。
 綺樹の読みが正しかったわけね」

「彼女はいかがですか?」

「相変わらずよ。
 馬車馬のように働いているわ」

「過労死目前と」


さやかは黙り込んだ。


「最初の一押しをすれば転がりだすんでしょうね」

「こちらとしては余り一押しして欲しくないのですが」


一応、渋ってみせる。

交渉を優位に進める定石だ。
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