契約妻ですが、とろとろに愛されてます
白とカカオ色の二層になったカクテルが目の前に置かれる。


「アルコール度数も他のものよりは軽い 試してみるといい」


真宮さんの前には彼の瞳の色を少し暗くしたような琥珀色の液体に大きな氷が入っているグラスが置かれる。


「それでは……いただきます」


カクテルは美味しそうに見え、勧められるままに素直に飲んでみる。


生クリームとカカオが混じる甘い液体が口の中に広がる。


ほんとにアルコール?っていうくらい飲みやすい。


「美味しいです」


思わずデザートを飲んでいるような美味しさに笑みが浮かぶ。


「ああ 良かった」


私が笑うと、真宮さんも微笑した。


「こんなに美味しいと思うお酒は初めてです やみつきになっちゃいそう」


もう一口飲んでみる。


小さなグラスはすぐに中身が減っていく。


「フルーツも食べろよ」


フォークで刺した小さく切られたメロンを差し出される。受け取りみずみずしいメロンを口に入れる。


真宮さんはと言うと、琥珀色の液体をゆっくり飲んでいるようでほとんど減っていないように見える。


私のもうすぐ空きそうなグラスを見て、真宮さんはウエイターを呼ぶと同じカクテルを頼む。


「この服は帰ったらクリーニングに出してお返ししますね」


「返さなくていい」


「でも いただく理由はありませんから こんなにキレイなブランドのワンピース、着れただけで十分ですから」


「俺には着れないから返されても困るな」


「でも……」と、言いかけた時、私達のテーブルに影が落ちた。


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