契約妻ですが、とろとろに愛されてます
両親同士が仲が良い俺たちは私立の幼稚舎の頃から大学まで一緒だった。兄妹みたいに過ごしたせいで、俺達には恋愛感情はない。玲子が研修医、俺が会社に入ると忙しくなり、どこの病院へ勤めているのさえ頭からなかった。


「柚葉は思ったより良くなっていないだろう?」


「相変わらず鋭いのね ええ、入院した時から比べると少しだけ良くはなっているけど」


「あんなにつらい思いをしているのに少しだけなのか?」


「ええ、あと一ヶ月は入院が必要ね」


「簡単に言うなよ」


玲子を睨みつける。


「私だって柚葉さんに早く退院して欲しいわ そうしたら看護師たちが落ち着くから」


「どうして看護師たちが落ち着くんだ?」


「琉聖さんのせいに決まっているじゃない ずっとモテていたのを見ていたけれど。可愛い婚約者がいるのにうちの看護師たちからキャーキャー言われているのよ?まさか知らなかった?」


玲子のあきれ果てたような言葉に俺は肩をすくめた。


「本当に愛している人に出会ったのね?昔の琉聖さんと違うもの 柚葉さんを見る時なんてこ~んなに目じりが下がって」


玲子は両手の指で自分の目じりをグッと下げた。


「お前も愛してくれてる男を見つけるんだな」


「そんなに簡単に見つけられたら、今頃結婚しているわよ」


玲子は頬を膨らませて言った。


「あと、一ヶ月の入院か……柚葉が嫌がるな」


俺は夕暮れの空をもう一度見てポツリ呟いた。


数日が経ち、仕事を終えた俺が病室に行くと柚葉はベッドに座りぼんやり窓の外を見ていた。


考え事でもしているのだろうか。俺が横に立っても気付かない。


俺はそっと腕を伸ばし、柚葉を抱きしめると頬にキスをした。


「琉聖さん!びっくりしたっ!」


柚葉の大きな目がさらに大きくなる。


「考え事でもしていたのか?」


「ん……夏も終わりだなって」


柚葉は寂しそうに微笑んだ。

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