契約妻ですが、とろとろに愛されてます
廊下を歩くと通り過ぎる数人の看護師さんがちらちらと琉聖さんを見ているのがわかった。


看護師さん達にまでモテるんだ……。


「柚葉?」


「あ?えっと……焼き鳥が食べたいです」


まず頭に思い浮かんだ食べ物を言ってみる。


「焼き鳥?……わかった 銀座にうまいところがある そこに行こう」


******


助手席の窓から外を心を躍らせながら見ていた。


銀座……入院して二ヶ月も経っていないのに、ずっと来ていなかったみたい思える。


「辛くなったらすぐに言えよ?」


運転している琉聖さんに言われて、窓の外を見ていた私は振り向いてにっこり笑った。


銀座の焼き鳥屋さんは琉聖さんの行きつけのお店らしく、姿を見せると奥まったカウンター席に座らされた。焼き鳥を焼く炭火の匂いがお店に充満している。でもここは一杯飲み屋さんのようなお店ではなく内装はモダンな和風。焼き鳥屋さんでもこのような所があるんだと初めて知った。


琉聖さんはレバー串を食べさせたがった。嫌いではないけれど、他にも美味しそうな焼き鳥があるから分け合って色々な種類を食べさせてもらった。車を運転する琉聖さんはお酒を断ってお茶にしている。


「琉聖さん、今まで食べた焼き鳥よりも美味しいです」


美味しいけれど、小さくなってしまった胃は四串ほどで早くもお腹がいっぱいになってしまった。


「もう食べないのか?」


「もう、お腹が一杯です」


食べる量の少なさに琉聖さんが眉根を寄せている。


「あ……でも、ここに書いてあるあんみつ食べていいですか?甘いものは別腹ですから」


メニューの裏に書かれたあんみつを指さして言うと、琉聖さんは後ろを通った着物を着た従業員に頼んでくれた。

< 121 / 307 >

この作品をシェア

pagetop