契約妻ですが、とろとろに愛されてます

出張

琉聖Side


翌朝、ニューヨークにいる部下から国際電話があった。


ブラッドフォード氏が直接俺と話をして契約をしたいと言っていると。親父と俺が一年かけて交渉していた契約だ。親父は現在イタリアに出張中。日本にいる俺が行かない訳にはいかなかった。


急遽、出張になってしまい、気がかりなのは柚葉だ。


ゆず……。こんな時に日本を離れたくなかったが……。


無意識に携帯電話を握りしめていた。重いため息を吐き、俺は桜木に電話をかける。ワンコールでいつものように桜木が出た。


「これからニューヨークへ行く 最短で出発できるチケットを手配してくれ」


『わかりました』


「それから 出発前に病院へ行けないだろう 柚葉を頼む」


『もちろんです』


電話が切られた後、十分もかからずに俺の携帯電話が鳴った。


離陸まであと三時間しかなかった。やはり病院へ行っていたら間に合わない。


簡単に荷造りを済ませた俺は仕方なく車を空港へ走らせた。


******


「え?琉聖さんは……」


私は突然病室へ現れた桜木さんの言葉を聞き返した。


「琉聖様は先ほどニューヨークへお発ちになりました」


「ニューヨークへ?」


「はい 大事な契約の件で、急遽 現地に行かざるを得なくなったのです」


「……わざわざ知らせに来てくださって、ありがとうございます」


琉聖さんの右腕の桜木さんも忙しいはずなのに来てくれて申し訳ない。


「琉聖様に何かお伝えすることはありませんか?」


「……私のことは心配しないで、お仕事頑張ってくださいって伝えてください」


「かしこまりました 必ずお伝えします」


小さく頭を下げた桜木さんは静かに出て行った。

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