契約妻ですが、とろとろに愛されてます
「……ゆず、俺達の交わした契約は無かったことにして欲しい」


「無かった……ことに……?」


今までのことが全部無かったことに?琉聖さんが私から離れていく……そう思うと、心臓が鷲掴みされたようにぎゅうっと痛み、目頭が熱くなった。


急いで琉聖さんから視線を外そうとした次の瞬間、琉聖さんの言葉に驚いて目を大きく見開いた。


「俺は契約に反した 君を愛してしまったから」


見つめてくる瞳は今まで見たことがないくらい暖かくて、いろいろな想いが募り涙がポロポロと止めどなく溢れ出てしまう。


「契約にあんな条項を入れた俺は愚かだったよ 最初から君に惹かれ、すぐに愛し始めていたのに」


私に惹かれ、すぐに愛し始めていた……。


私は耳を疑った。そしてもっと疑いたくなる言葉を琉聖さんは私に言った。


「俺と結婚して欲しい」


「結婚……?こんな身体の私に……?琉聖さん、冗談なら今は――」


「こんなこと、冗談で言う男は男じゃない 本気だよ 柚葉 結婚して欲しい 君でなくてはだめなんだ」


私でなくてはだめ?


「病気は治る 俺が愛しているのは柚葉だけでずっと守りたい」


真剣な表情、熱い眼差し、琉聖さんの気持ちは本物なんだと気づいたけれど、菜々美さんが気にかかる……。


「菜々美さんが……」


「あの写真は君を陥れる為に撮られたものだよ 外国人の女性と食事をしているのは支社の秘書だ 何を吹き込まれたか想像はつくが、彼女とは何にもない」


そうだったんだ……私はなんてバカだったんだろう……。


「ゆず、退院したら結婚してほしい」


突然のプロポーズに溢れ出る涙を止められず、琉聖さんがポケットからハンカチを取り出して涙を優しく拭ってくれる。


「この涙は?まさか嫌だと言うのか?」


「いいの……?こんな私で……?」


完璧に治っていないのに。


「俺を愛してくれているんだろう?俺は柚葉でなければだめなんだ 愛してるよ」


そう言うと、不意に自嘲気味に笑みを漏らす琉聖さんにポカンと見てしまう。

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