契約妻ですが、とろとろに愛されてます
お姉ちゃんに心配をかけてしまい気分が落ちこんでしまう。


「気づかずに悪かったな」


真宮さんが不意に謝った。


「え……?そんなこと無いです 酔っ払ったのは私のせいですし」


謝られて意外だった。


この男は人に謝ることに慣れていなさそうだったから。


人の上に立つことに慣れた男性で、いかにも有能そうに見えるから。


「送るよ」


「大丈夫です。それに真宮さん お仕事ですよね?」


グレー系のスーツに着替えている。スーツ姿は真宮さんに似合い過ぎて見惚れてしまいそうだけど、私服も見てみたいと思ってしまった。


「それなら桜木に送らせよう」


「桜木さん?」


「昨日車を運転していただろう?俺の秘書だ」


寝室を出ると、明るく広い部屋に昨日の男性が立っていて驚いた。


私を送ることは決められていたらしく、五分後には桜木さんの運転する車に乗っていた。



******



それから私は真宮さんが気になる毎日を過ごしていた。


酔っぱらっていた私を襲うこともあの状態なら出来たはず。でも、彼はしなかった。紳士的な真宮さんが好ましく思える。


あ……女性に不自由していないからか……。それに私に魅力がないんだ。私ったら、何を考えているんだろう。まるで襲われても良かったみたいに……。


彼にはもう二度と会わないだろう。


その証拠に、洗面所に残していったワンピースは数日してクリーニングされて届けられたから。


このワンピースは女性と別れる為に協力した報酬みたいなもの。


業者がワンピースを届けた時、家に私しかいなくてホッと胸を撫で下ろした。


そして急いでクローゼットの奥の方にワンピースを隠すようにぶら下げる。


デパートの婦人服売り場に勤めているお姉ちゃんはワンピースを見たら高価な物だとわかるだろう。そうしたらいろいろ聞いてくるはず。真宮さんを忘れる為に今は経緯を話したくなかった。



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