契約妻ですが、とろとろに愛されてます
琉聖Side


まだ疲れやすい柚葉はマンションへ着く前に眠ってしまった。


俺に抱き上げられても起きない柚葉を静かに連れて行く。マンションに入ると、ソファに横たわらせコートを脱がしにかかる。


「ん……」


柚葉の瞼がパチッと開き、黒目がちの瞳が俺を見る。


「あ……っ」


「起きてしまったか……」


「起こしてくれれば良かったのに……」


「ぐっすり眠っていたからね 起こすのが可哀想になった」


柚葉の腕が俺の首に回り、顔が近づいてくる。


「ゆず?」


俺の頬にふんわりとしたキスを落とす。


「コ、コート脱がなくちゃ」


柚葉は恥ずかしそうに俺から離れると立ち上がった。


俺はキッチンに行きシャンパンを出し、片方の手にシャンパングラスを持った。


並んで座りシャンパンを注ぐと柚葉の手にグラスを持たせてやる。


「ふたりの未来に乾杯」


グラスがふたつ合わさると、透明感のあるきれいな音色が響いた。


「「乾杯」」


「入籍ってあっけないものなんですね」


柚葉が婚姻届にサインして、ものの五分とかからず受領された。


「奥様 来春には結婚式だ。これからが忙しいよ?」


「お、奥様っ……」


恥ずかしそうに両手を頬にあてる柚葉を見て笑う。


「苗字が変った実感は?」


柚葉は小首を傾げた。


「ぜんぜん……ない……まだ誰にも呼ばれていないし そうだ、保険証変えないと」


「そうだな、いろいろ手続きする書類がある 桜木にやってもらおう」


「でも、桜木さんは忙しいです」


自分の用事をやってもらうのを申し訳なく思うのは柚葉らしい。


「桜木は有能だから大丈夫だ」


俺は請け負った。


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