契約妻ですが、とろとろに愛されてます
第一条 決定権は真宮流聖にある。

第二条 期限は真宮流聖によって決められる。

第三条 周りに悟られないよう演技をすること。

第四条 本気にならない。

第五条 余計な詮索はしない。

第六条 身体の関係は求められたら応じること。

第七条 条項に違反した場合は1500万円を返却すること。


この条件……全部私に不利……。


「不満か?」


私の顔が不満そうに見えたのか、聞かれる。


「私に不利な条件ばかりじゃないですか」


「1500万円が手に入るだろう?」


「私の身体は1500万ですか?」


第六条が気になる。求められたら応じるって……。


「まあそういうことだ 婚約している間、禁欲生活を強いられるのは困るしな」


男性と寝た経験はないけれど、どんなものかはこの年になればわかる。今まで付き合った人は二人。彼らと関係を持たなかった。キス止まりでそんな雰囲気になるのを意識的に避けていた。


そんな私が真宮さんと……。出来るのだろうか……。


悩んでいるのがわかったのか、真宮さんは何も話しかけてこない。


私の意思に任せるということなのだろう。嫌ならお金は入らない……。


どうしよう……。


その時、慎の落ち込んだ顔を思い出した。慎はまだ大学生、これから就職活動をしなければならない。このことが大事(おおごと)になったら就職活動が難しくなってしまう……。人生一度つまづいたら取り返すことが出来なくなるかもしれない……。


私は大きく息を呑む。


家族を救う為ならなんでもしよう……このお金があれば助かる。


「……サインします」


真宮さんが私にペンを差し出す。


丁寧な字でサインをしてから真宮さんにペンを返すと、その横に彼もサインする。


それを桜木さんがコピーして封筒に入れると渡された。


「姉と弟に会った時には、本当の婚約だと思わせて欲しいんです」


「無論、本当に見えなければ意味がない」


真宮さんは当然のことのように頷いて約束した。

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