契約妻ですが、とろとろに愛されてます
「この身体で御曹司を虜にしたのか?何も知りませんって顔でどんなことをするんだ?」


いつもは穏やかな目は、いつの間にか獣のような目つきに変貌していた。


「やめてくださいっ!」


床に押し倒されて横瀬課長の手が私のブラウスを乱暴に引っ張る。ボタンがパチパチっと飛び散り、ブラジャーが露出してしまう。


「いやっ!やめて!!!」


「抵抗しても無駄だ この会社には俺たちしか残っていない」


そう言って再び唇を乱暴に重ねる。琉聖さんのキスとは全く別物で、嫌悪感しかない。


「っ……いやっ!」


顔を逸らして唇を避けようとした。そのせいで、唇は肌蹴たブラウスから覗く胸の膨らみに唇を這わせてくる。


「うっ……」


全身に鳥肌が立ち、嫌悪感で吐きそうだった。


「横瀬課長!止めてください!こんなことしたら――」


「訴えるとでも言うのか?お前は言えないさ お前に誘われたとでも言う バージンでもあるまいし 婚約者にしていることを俺にもしてくれよ」


ブラウスの形を成さない布きれが引っ張られ脱がされる。


「ひゃっ!やめて――!」


太腿に汗ばんだ手が強引に這いまわり、脚を閉じようとするも、すぐに開かされてしまう。


「抵抗するだけ無駄だと言っただろう?大人しくしろ!」


バシッと頬を叩かれて意識が一瞬、遠のきそうになる。


再び唇が重なり、舌が入り込んでくる。胸はギュッと掴まれ痛いほどだ。


「ううぅ……っ……」


琉聖さん……。


どうにかして逃げようとしたけれど敵わず、抵抗も力尽いて両手がパタッと床に付いた時、室内が突然明るくなり私に掛かる重みが無くなった。


よく分からずに涙でかすむ目で音のした方を見ると、横瀬課長が床に倒れていた。投げ飛ばされた時、気を失ったようにぐったりと横たわっている。


「ふん、都合の良い奴だな」


私は耳と目を疑った。その声の持ち主の方を見ると、怒りをあらわにした琉聖さんが立っていた。


「大丈夫か?」


「あ……」


琉聖さんを見てこんなに嬉しかったことはない。琉聖さんがテレビドラマのようなヒーローに思えた。


安堵したら急に胃液がせり上がってくるような吐き気がこみ上げてきて、落ちていたボロボロのブラウスを胸元にかき集めると、ふらつきながら洗面所に駆け込む。


「ううっ……」


水を勢いよく出して口をゆすぎ、乱暴に唇を手の甲で何度も洗う。


それでも気持ち悪い感覚が消え去らない。

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