契約妻ですが、とろとろに愛されてます
吐いている最中に目の前がくらくらする眩暈に襲われ、立っていられなりその場にくず折れる。


追って来た琉聖さんに抱き上げられて、女子更衣室に入りイスに座らされると、自分のスーツの上着を脱いで震える肩に羽織らせてくれた。


「ケガは?」


首を小さく横に振るのが精一杯。震えを抑えようと両手を握りしめて俯いていた。


「どうしてここに……?」


「今日は残業だと言っていただろう?」


琉聖さんはメッセージを聞いて、迎えに来てくれたらしい。琉聖さんが現れなかったら今頃私は……。


想像すると更に身体の震えが酷くなった。


「私……」


「何も言わなくていい あの男はまかせてくれるね?」


私は安心できる腕にそっと抱きしめられた。


「何もなかったんだ もう安全だから 早く忘れるんだ」


******


琉聖さんが処理をしている間、私は更衣室のベンチで座っていた。


気分は最低だった。胃の中は空なのに、まだ吐き気が治まらない。


「柚葉?」


ドアの外から琉聖さんの声がした。私の返事を待たずにドアが開く。


「柚葉、気分は?」


琉聖さんはしゃがんで私と目線を合わせる。


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