契約妻ですが、とろとろに愛されてます
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数分後、琉聖さんはトレーに食事をのせて戻ってきた。戻って来るのが早いので用意してくれていたみたいだ。


「食事だ」


身体を起こした私の膝の上にトレーが置かれる。


「ベッドの上じゃなくても……」


「病人は素直に食べろ」


病人食のおかゆではなかったけれど、さっぱりした料理が色々あった。


「いただきます」


両手を合わせて感謝を込めるとお箸を手にした。


私が食べている間、琉聖さんは先ほどの場所で仕事をしている。


書斎で仕事すればいいのに……。


本当の恋人同士だと錯覚してしまいそうになる。どうして琉聖さんは会社に迎えに来てくれたのだろう……気まぐれにしろ、本当に感謝だ。


箸が止まり物思いに耽っていると、琉聖さんの声が思考に入ってきた。


「えっ?」


「食べ終わったら寝ろよ」


「あ、はい もう十分です ご馳走様でした」


そう言うと、再び私の元へやってくる。あまり減ってはいない皿を見て琉聖さんは顔を顰めた。けれど無理に食べろとは言わなかった。



翌朝、目が覚めた時も熱は下がっていなかった。


琉聖さんは医者を呼ぶと言ってくれたけれど、解熱剤を飲めば大丈夫と言い張るとあきらめてくれた。


「昼飯は届けさせるからちゃんと寝ていろよ」


そう言って仕事に出かけていった。


琉聖さんが出て行った後、再び枕に頭をつけるとすぐに睡魔に襲われた。
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