契約妻ですが、とろとろに愛されてます
琉聖さんは箱からドレスを出して私に手渡す。


オフホワイトのロングドレスだった。少し幅のある肩紐とウエスト、そして裾に施されたレースが目を引く。Aラインのそのドレスは手を触れるのも恐れ多いくらい上品で優雅だ。


私がドレスを手にあっけに取られていると、琉聖さんは四角くて薄いベルベットの箱も差し出す。


「これを付けるんだ」


「?」


こわごわと開けてみる。


「そんな……琉聖さん……」


中にはルビーが沢山連なっている豪華なネックレスと揃いのブレスレット。


これを身につけるとなると恐ろしい。身に付けても私に似合うはずがない。これは大人の女性が似合う物。


「だめです……付けられません」


ベルベッドの蓋をパタンと閉じ、琉聖さんに返す。


「君が付けなければ意味が無い そのドレスにわざわざ合わせたものだ」


「でも……」


「今日でこの婚約は広く世間に知られるんだ しっかりアピールしないとな 支度はゆっくりでいい 後から登場した方が目立つだろう」


そう言うと部屋から出て行った。


そう言うことなんだ……婚約を更に広める為に出るパーティーだったんだ……。


でも、私を着飾らせても琉聖さんに相応しい婚約者になれるとは思わない……。


私は重苦しいため息を吐くと、パウダールームへ向かった。

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