花びらとともに、散りぬるを。



「おい、ボーッとすんなよ。」


声をかけられ、ハッと現実に戻る。


「ごめん、今いく!!」

慌てて荷物を鞄に詰め、それから私達は教室を出た。


階段の途中で、鏡に映る私達2人の姿が目に留まった。


気のせいかもしれないけど──。


こうやって2人が並んでいる姿は、初めて帰った時と比べてとても近くなっている。


…何だか、嬉しいな。
初めは一方的に人間観察してただけなのに。

いつの間にかこんなにも距離を縮めて。


「おい、何ニヤけてるの?」


──不覚にも回想していてニヤけた顔を見られていたようです。


「そんなことないって。」


私は両手を頬にあてる。
通常より熱と赤みを帯びた私の頬は、私の気持ちを唯一素直に表すものだろう。


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