あなたは笑顔で…



どうしてかしら……?



考えていると「あ、」と小さく夜が声を出す。



「何よ?」


「ほら、さっきの。華が最近休みがないって言ってたから、気ぃ遣ってくれたんじゃねぇの?」


「どんな気の使い方よ」



まぁ確かに言っていたかもしれないわね。



「それにしても長いと思うのだけれど」


「そんなの上の奴等に言えよ」



……それもそうね。


夜にしては珍しくまともな意見だったわ。





私たちの仕事はこの封筒をもらった時点から始まる。


つまりはニンゲンの命……魂を取る仕事。



その仕事を遂行さえすれば、仕事の期間中あとは何をしていてもいいわけだ。



そうなると暇よね……何をしてようかしら?


そんなことをぼんやりと考える。



「なぁ、またこれ見てたのか?」



そんな思考を遮ったのは夜の声。


仕事終わったなら帰ればいいのに、と思ったのはいつものこと。



「……別にいいでしょう?好きなんだもの」



私がさっき見ていた本は花の図鑑。



「へー……俺にはわかんないや」


「別にいいわよ、わかんなくて」



夜から本を取り返す。


写真だけだけど……見ているだけで楽しいんだもの。



「いやいや、そうじゃなくてさ」


「?」


「ニンゲンは嫌いなのに、ニンゲンの世界の花はほんとに好きなんだな、って思ってさ」



あぁー……そういうこと。


おかしくて笑ってしまう。



「くすくす……私はニンゲンが嫌いなんじゃないわよ。ただ……」


「ただ?」


「ただ……おかしいだけ。そして愚かに思うだけよ」


「何気、そっちのが傷つくと思うよー」



あなたも棒読みでしょうが。お互い様ね。



でも……本当に、ニンゲンって馬鹿。





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