ベイビー、君は僕のもの
お昼過ぎに待ち合わせをして、買い物やゲーセンなどに行っていたわたしたち。

夜ごはんも食べ終え、一旦駅まで戻ってきた。

ふと腕時計に目を向けると、示していたのは午後7時26分。



『遅くても夜の7時までには駅で別れて、俺に連絡寄越せ。迎えに行くから』



……かなちゃん、心配してるかな。

一瞬浮かんだ考えを、軽く頭を振ることで打ち消した。

別に、かなちゃんは関係ないもん。これは、わたしと津川くんのデートなんだから。


わたしの1歩前を歩いていた津川くんが、券売機の近くで足を止めて振り返る。



「どーする? これから。ちなみにここから2駅で、俺の家なんだけど」

「え、あ……」



首をかしげながら顔を覗き込まれ、思わず視線をさまよわせた。

……どうしよう。正直、このまま津川くんと一緒にいても、全然楽しめる気がしない。

それに、『俺の家なんだけど』、って……。



「えっと津川くん、悪いんだけど、少しだけ待っててもらえるかな? わたし、ちょっとお手洗いに行ってくるね」

「……ん、わかった」



あくまで表面では笑みを取り繕い、とりあえずわたしは適当な理由をつけて、逃げるように津川くんから離れる。

歩きながらもう1度腕時計に視線を落として、深くため息を吐いた。
< 19 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop