ベイビー、君は僕のもの
それから、約5分後。

お手洗いから戻ったわたしが先ほど津川くんと離れた場所に向かうと、彼は壁にもたれながら、何やら電話をしていた。

邪魔しちゃ悪いかな、なんて考えて。こちらから声を掛けたりすることなく、少しずつ近付いていく。

すると、はからずも津川くんと電話の相手との会話が聞こえてきて──わたしはピタリと、足を止めた。



「……うん、そう。だってあの子、俺といても全然上の空だし。……はあ? 別に、俺はそんなヘマなんてしてねぇよ。呼び出したときうれしそうだったし、案外簡単に落とせるかと思ったら……とんだ堅物だなアレは。ったく、今日家に連れこめるかどうかも、あれじゃあやしいぜ」



……何を、言っているんだろうこの人は。

『簡単に落とせる』?

『とんだ堅物』?

『家に連れこめる』?


津川くんがケータイをポケットにしまったのを見計らって、わたしは彼の前に姿を見せた。

すぐに彼は、口を開こうとして。だけどもやけに顔をあげないわたしの様子に違和感を感じたのか、眉を寄せる。
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