ベイビー、君は僕のもの
「くればや……」

「──津川くん。今の電話の相手は、お友達?」



相変わらず、顔はうつむいたまま。

津川くんの声をさえぎって、わたしは訊ねた。

そんなわたしの言葉に、すべて察したのか──彼は特に動揺する様子もなく、ああ、と口角を上げる。



「……もしかして、今の話聞いちゃった?」

「………」

「あ~あ、やっぱり駄目じゃん。完璧予定くるった」



ぐらぐら、する。自分が今、ちゃんと足をつけて、床に立っていられてるのかわからない。

目の前で面倒くさそうにため息を吐く彼に、どうして、と、震える声を掛けた。



「わたしのこと、気になってたって、いうのは……」

「ああ……別に、あれにそこまで深い意味なんてないよ。ただ、紅林さんみたいに、普段強気な子は……一緒に寝たらどーなんのかなって、思ってただけ」



言いながら津川くんは右手を伸ばし、わたしの首筋に触れる。

ビクリと肩をはねさせたわたしを気にすることもなく、中指と人差し指で、スッと絆創膏を撫でた。



「しかも、この首の絆創膏さぁ……」

「……ッ、」

「は、やっぱりその反応。キスマークでも隠してたわけ?」



すました顔して、やることやってんじゃん。

嘲るように吐き捨てられ、ぎゅっと両手のこぶしを握りしめる。
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