ベイビー、君は僕のもの
"君のもの"
バタン、と多少乱暴に、車のドアが閉まる。

かなちゃんが運転席に乗り込むのを、わたしはぼんやりと見つめていた。



「……ごめん。断られたのに、勝手に来て」



駅に隣接するこの駐車場は、それなりに人の姿があって。クラクションや車のライトが、五感を刺激する。

だけど今、わたしの目は、耳は。かなちゃんだけを、捉えていた。


申し訳なさそうに自分の手元を見下ろしている彼に、わたしは首を横に振る。



「かなちゃんが謝ることなんて、ないよ。……全部、わたしが悪いから」



言いながら、また、目頭が熱くなってくる。

鼻の奥がツンとして、わたしはそれをこらえるように、ひざの上でぎゅっと両手を握りしめた。

小さく、声をしぼりだす。



「……ごめ……なさい」

「………」

「本当に、ごめんなさ──……ッ、」



弱々しい声で呟いたと同時に、強く身体を引き寄せられて。

気付けばわたしはしっかりと、かなちゃんに抱きしめられていた。
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