君のところへあと少し。

22

「あれ、キミこの先の喫茶店の女の子じゃない?」


輪に入らず傍観していた少し年上の男性が、気不味い雰囲気を破る。


「課長…」

「まぁ三浦が女性連れてたら、確かにモメそうだけどさ。
俺らだって独身者なんだから、立場ないよなぁ。そう思わないか?」


課長、と、言われたその人が満面の笑みでぶつくさ言うのをきっかけに、周りにいた男性が口々に言い始めた。

「三浦だけが男じゃねぇって。」
「俺らだってそこそこイケてるよなぁ。」


雰囲気が丸くなった時。

ハルの目の前に居た山崎、と呼ばれた女性がキッと睨みつけながら吐き捨てた。


「あたし、こんなお子様に負けたとか認めない!和也の彼女はあたしだけだわ‼」

「依子!」

「だって!勝手に別れるとかいって、あたしなんにも納得してないのに!」


まわりの仲間も、最早手が出せない状態になっている。


(和也、依子、かぁ。やっぱりそうか。元カノ…すごい美人、スタイルいいなぁ。)


ハルはボンヤリと揉めるふたりを見ていた。

そのまま、後ろに下がる。


(ヤバい…泣きそう。離れなきゃ…)



「君!」


踵を返して走りだしたハルに真っ先に気付いたのは課長、その人だった。



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