君のところへあと少し。

23

海岸に駆け下りる。

波打ち際を走っていく。

髪を振り乱して走る。

何にも考えられなかった。

だから、まさか、追っかけてきてるなんて思わなかった。


「ハル‼」


腕を掴まれ引き止められる。

「ハル!話を聞けって‼」

何にも言えなかった。
言葉を話せば涙がこぼれそうだし、もう一度走りだして逃げても体力バカのナリに勝てる筈がない。


走るのをやめ、腕を振り払うわけでなく、立ち尽くしたままのハルはひたすら俯いていた。

俯いてたら、長い髪で顔が隠せるから。


「店に戻ろう?オレの話をきいてくれるか?」

返事はない。

そのまま、ハルの手を引いて店へと戻った。



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