君のところへあと少し。

33

「誰だ、ハル。オレが知ってる奴か⁈」

え、と思った瞬間には両腕を掴まれていた。

「あ、えぇと…河内さん…?」
「課長⁈なんで⁈」


詰め寄られてもしらないよ…。

「さぁ?」

私の事なら説明するけど。

「ま、ハルもいい年なんだし、いいんじゃないの?いつまでも煮え切らないウジウジした奴より。」


奏がしら〜っと言うのを聞いてナリの表情が一気に苛々したものに変わる。

「ハルも大丈夫みたいだし、行こうか、日和。俺たちの大切なラブラブタイムをバカに邪魔されたら勿体無いからねー。」

日和を促し立ち上がる奏にハルは居住まいを正して頭をさげた。


「奏、ほんっとーに、ありがと。」


これを人は土下座という....…んじゃなかったかな。
という程のお礼。


残された沈黙のふたり。


「あ、私もお店に戻るね。今日はごめん。迷惑かけて。」

向き直り、ナリにも頭をさげた。


自分の事で奏やナリに迷惑をかけるのはどんな理由があっても嫌なのだ。

礼儀は大切。


「あ、じゃあ送る。」
「いいよ、ひとりで帰れるから。ナリはゆっくり休んで。折角の日曜日、身体を休めないとね。」

ニコリと笑い、ベッドから出る。

恥ずかしいな。
成り行きとはいえ、ナリのベッドで寝てたなんて。

色々考えちゃうよ。


いやもう、恥ずかしい。

「ハル。」

部屋を出ようとドアノブを握った時に呼ばれて振り向いた。

…ら、触れた唇。

ハルは物凄い勢いで後ずさる。

「もう、限界。カッコ悪くていいわ。お前盗られるくらいなら、カッコ悪い方がマシ。」

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