君のところへあと少し。

35

「ハル?」

「いやー、もう頭の中が整理できないよ。ナリ、ごめん、やっぱり帰る。」

とりあえず逃げよ。
落ち着いて考えよ。でないとパニック過ぎて変な勘違いしちゃう。

「はぁ?帰るとかナシだろ。この状況で
。」

頭をガシガシとかいてナリは歯痒いのか苛々とした態度をとっていた。

逃げ場がないままジリジリとにじり寄られ、ベッドまで追い込まれた。

「ちょ、ストップ!マジでストップ‼」

逞しい胸を押し、なんとか制止。

「ナリ!ちょっと待って!」
「待たねぇ。なんだよ。」
「こういうのはさ、色々準備とかあってさ、今すぐ頂きます的なのはどうかとか思うわけよ、あ、私の準備とかって意味じゃなくてさ、気持ちとかの意味なんであって、逃げてるわけじゃなくて」

軽々と抱えられてしまい、機関銃のように話して雰囲気打破に必死。

「ナリはさ、色んなひととお付き合いとかしてきたんだろうけど私ってばこれまたお付き合いとかの経験値が」

「やかましい。」
「はい、スミマセン。」

はあ、とため息をつかれてしまった。

「わかった。お前が言いたい事。時間やるよ。ま、今日は倒れたばっかだしな。オレも責任あるし、大人しくしててやるよ。」


二カッと笑う。
大好きな太陽みたいな笑顔。

「ハル、もう1回。」

近寄ってきたナリの顔。
予測変換できないわけじゃない。

そうなりたい。

そう思ったから目を閉じた。

「オレのモノになれよ。」
唇が離れて、至近距離で。
命令されて思わず頷く。
「なる。ナリのモノになる。」


遅い、遅〜い春がハルにやってきた。

真夏だけどさ。


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