恋花火~あの日、言えなかったコトバ~
プロローグ
「本当にいいのかい?今ならまだ考える時間あるよ」
「いや、大丈夫です。何度も考えて結論出しましたから」

普通の人ならまず訪れない場所の雰囲気と、これから自分がやろうとしている行為から緊張している俺を、その人は優しく気遣ってくれた。
もう名前も忘れてしまったけれど、今でも彼は都内で活動しているだろう。少なくとも、当時の俺が訪れたのは新宿の片隅にあるスタジオだった。

「じゃあ、これがリクエストを元に描いてみた図案なんだけど、どうかな?」

そう言って渡された紙にはエレキベースに巻き付く1匹の蛇が描かれていた。若干自分が抱いていたイメージと違ったが、それでも一瞬でその絵に魅せられていた俺は

「想像以上です。是非この絵でお願いします」

「OK、じゃあ早速始めようか。服脱いでここに横になって。気分悪くなったりする事も人によってはあるからきつくなったらすぐに言ってな」



数時間後、俺の左腕にはタトゥーが入っていた。
これでもう迷いはない。アイツと一緒なら、この先もずっと…
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