恋花火~あの日、言えなかったコトバ~
「ど、どうだった?あたしうまく歌えたかな?」

ゆっくりと3人の方に視線を向ける。

「すごいよかったよ!思わず泣いちゃった」

ハンカチで目を押さえながら、サヤカとマイがほめてくれた。そしてナオキくんも

「ああ、合格だ。悪い、ちょっとトイレ」

素っ気なく出ていく。

…よかった。
ふぅ、と一息つくあたしに
「彼氏さんトイレで号泣中だねきっと。
カナが歌ってる途中、うちらより先に目がうるうるしてたもん」

マイがこっそり教えてくれた。

「そりゃあ生みの親としては当然でしょ、カナの歌ってるとこイメージしながら作ったって言ってたし。でもよかったねカナ、これで一緒にバンドできるよ」

「うん、…ってえぇ?何それ、聞いてないよっ」

さらりとサヤカが今まであたしの知らなかった秘密を打ち明ける。

「多分、カナの覚悟を見たかったんじゃない?結果はどうでも最初から合格させるつもりだったんだよ、きっと」

その言葉に今度はあたしが泣き出してしまう。
どれだけあたしが大切に想われているか、
改めてあたしはナオキくんからの愛を感じたような気がした。



それからみんなでファミレスに移動し、御飯を食べてから解散した。
別れ際、ナオキくんが

「これからは一緒にいられる時間、もっと増えるな。あまりあからさまにいちゃつけないけど」

「うん、あたしは大丈夫だよ。これからもいっぱい、素敵な曲一緒に作っていこうね」


どちらからともなくゆっくりと顔を近付けあって、あたしたちはこの日、3度目のキスを交わした。
< 30 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop