東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》
「…椿さんは相変わらず…お綺麗ですね…」



「ありがとうございます…栗原中尉殿」



「父上の喪もあけてないと言うのに…花見なんて少し不謹慎じゃない?」


弟の清史が俺たちの花見席に乱入して来た。



「…花見は御堂家の恒例行事だ…常世の国で父上も庭の満開の桜を見ている事だ」




「…『陰陽庁』勤務は有りがたいけど…兄上は変わりましたね…腑抜けになった」



「腑抜け?おいっ!?清史…弟だからって…当主の俺に向かってそのような無勢な事言えば…叩き斬るぞ!!」



「はいはい…前言撤回するよ…」



「はいは一度いいっ!!」



清史は花見には加わらず…踵を返してしまった。


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